1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件。当時14歳だった中学3年生が小学生児童2人を殺害し、少年法の厳罰化にもつながった。事件から28年…すでに国が目指した“更生”を果たし、社会復帰した少年Aはどんな人生を送っているのか? 長年、少年犯罪を追い続ける毎日新聞の川名壮志氏の新刊『酒鬼薔薇聖斗は更生したのか:不確かな境界』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/つづきを読む)
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神戸連続児童殺傷事件「少年A」は更生しているのか?
いつの時代でも、忘れえぬ事件というものがある。
時代はうつろい、人々が令和の世に生きたとしても。
アナログが廃れ、世にデジタルが広がり、世界がグローバル化しても。
神戸連続児童殺傷事件をおこした酒鬼薔薇聖斗こと、少年A。
すでに少年院を出て、私たちと同じ社会に暮らすAは、はたして更生しているのだろうか――。
社会を成熟させるには、何よりもまず共生への意志が求められる。
かつて、そう述べた哲人がいた。たとえ自分の理解のおよばない異質な他者であったとしても、拒んではならない。それが目ざわりな敵だったとしても、排斥してはならない。平たくいえば、そういうことなのだろう。
であるならば、少年事件を語るうえで、まずは罪深い過ちを犯した少年の社会復帰、その更生に思いをめぐらせたい。
1997年におきた神戸連続児童殺傷事件。それは、いまだに記憶に残る事件だからこそ、少年Aの行く末に多くの人が関心をよせている。だが、はたして更生とはなんだろうか。なにが、どうなれば、人は更生したといえるのだろうか。
じつは、法律には、「更生」の定義がない。更生の意味合いは、きわめてあいまいで、抽象的でもある。それだけに、何をもって更生したといえるのかは、はっきりしない。
それでも国が更生のために、絶対に必要だとする条件がある。
再犯をしないこと、だ。