異世界ライトノベルの主人公は長らく10代の若者が定番だったが、ここ数年増え続けているのが「おっさん」の主人公たちだ。
現在アニメ放送中の「片田舎のおっさん、剣聖になる」も、45歳という年齢相応にくたびれた剣術師範の中年男性が、小さい頃に剣術を教えた弟子たちに引っ張り出され……というストーリーが展開されている。
今なぜおじさんなのか、そしてどんな人が書き、読んでいるのか。原作者の佐賀崎しげるさんに話を聞いた。
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――おじさん主人公の周りに多くの女性キャラクターがいて一見ハーレムにも見えるのですが、関係が恋愛に寄りすぎずにリスペクトや恩義といった感情に分かれているのが印象的です。
佐賀崎 それには理由があって、当初は男女が半々くらいの予定だったんです。「年下に慕われるおじさん」というポジションが十分に魅力的だと思っていたのですが、友人から「序盤に男を出すのは無駄だ」と言われまして。
――無駄、とはどういうことでしょう?
佐賀崎 友人は小説にものすごく詳しくて僕の師匠のような存在なのですが、その彼が「物語の導入部では読者を一気につかむことが重要だから、目を引く要素を優先した方がいい」と。
――ライトノベルの王道を外す必要はない、と。
佐賀崎 そうです。ただ気をつけたのは、「ラブ」に寄りすぎないことです。45歳のおじさんに恋愛感情を向ける女の子もいるでしょうが、尊敬、恩義、ライバル心――そういった複雑な感情のグラデーションを作るのが大事だと思っていました。
「おじさんのいいところは年齢差の幅が出せるところ」
――それは年の離れた“おじさん主人公”だからこそ可能になったのでしょうか。
佐賀崎 別に「おじさんの特権」というわけでもないと思います。例えば高校1年生が高校3年生に思う感情でも色々ありますよね。好きな人、尊敬できる先輩、いつか追い抜いてやるとか。
ただおじさん主人公のいいところは年齢差の幅が出せるところで、後輩、部下、弟子、親子や親戚の子ども的など、いろんな距離感でいろんな慕われ方ができるんです。