団地の部屋で暮らしている佐々木瑞穂さん(仮名/当時35歳)と、娘の萌香ちゃん(仮名/当時6歳)。2人はなぜ「七五三」というめでたい日に殺されなければならなかったのか…? 平成9年に起きた事件の結末を事件サイト『事件備忘録』を運営する事件備忘録@中の人の新刊『好きだったあなた 殺すしかなかった私』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全4回の2回目/続きを読む)
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殺害容疑で逮捕されたのは…
11月16日夜、伊達署の捜査本部は瑞穂さんと萌香ちゃん殺害の容疑で、この男性の妻を逮捕したのだ。
逮捕されたのは伊達市の隣、虻田町(現・洞爺湖町)在住の保養所従業員、山村美枝子(仮名/当時55歳)。
美枝子は夫が瑞穂さんと不倫していることで家庭が壊されると危惧、夫が持っていた瑞穂さん宅の合鍵を使って侵入し、ふたりを殺害したことを認めた。美枝子はそれまでに瑞穂さんと直接会ったこともあったという。
不倫相手のみならず、その幼い娘まで殺害したことで、検察は「近年まれにみる凶悪」として美枝子に無期懲役を求刑したが、札幌地裁室蘭支部の田島清茂裁判長は懲役18年という判決を言い渡した。
犯行自体は計画的で狂暴かつ卑劣、としながらも、殺意を持ったきっかけは偶発的な側面が否定できないこと、また、事件後、美枝子が深く反省していることなどが量刑の理由だったが、それにしてもかなりの減刑に思える。
瑞穂さんは最初の夫も当時52歳と、かなり年上の男性に惹かれる傾向があった。年上となるとどうしても既婚者である確率は高くなるわけで、その点で瑞穂さんにはいろいろと批判的な評判もあったという。
最初の夫とも、萌香ちゃんが生まれてすぐに別居しており、美枝子の夫と交際を始めたのはその離婚が成立して間もないころだった。美枝子は長年連れ添った夫がまるで人が変わったように自分を蔑ろにし、人目もはばからず瑞穂さん母子のもとへ足繫く通うようになって心を痛めていた。
50代半ばの自分と、30代で若く美しい瑞穂さん。温泉施設で働く「おばちゃん」でしかない自分がみじめだった。