ぼくが長嶋さんに最後に会ったのは、今から20年くらい前のことになるのかな。当時やっていた球団の練習で九州の日向にいたとき、ちょうど宮崎で巨人軍がキャンプをしていてね。声をかけられてそっちのグラウンドに行くと、一茂君に「いま、親父がいるよ」と呼び止められてさ。連れられてスタンドの部屋に向かったところ、長嶋さんがソファに腰かけて練習を見ていたの。

茨城ゴールデンゴールズで監督を務めた

 ぼくを見ると長嶋さんは「お!」という顔をして、隣のソファをぽんぽんと叩いた。「欽ちゃん、隣に座りな」という意味だ。でも、そのときぼくは、何だか体がすぐには動かなかった。だって、長嶋さんは憧れの人。隣に気安く座るなんてとてもできない、という気持ちがしたんだ。

「長嶋さんはぼくの憧れの人ですから。友達みたいに隣に座るわけにはいきません。こうやって、ちょっと遠くから見ているくらいがいいんです」

「欽ちゃん、モテてる?」

 すると、長嶋さんはもう一度隣のソファを叩いてさ。それから何ともいい笑顔を見せてくれたんだ。それが、ぼくの胸に焼き付いている長嶋さんの姿だ。

 思えば、ぼくがコメディアンの見習いとして浅草にいたときから、長嶋さんはスターそのものだった。朝、楽屋にいると、先輩たちは必ずスポーツ新聞を小脇に抱えてやってくる。その一面にいつもどーんと出ているのが長嶋さんで、「昨日、あの2塁打は良かったなあ!」なんて会話が交わされる。「巨人が好き」ではなく「長嶋さんと王さんが好き」という野球ファンが大勢いて、ぼくもその1人だったんだよね。

 だから、コント55号で人気が出たとき、巨人・ヤクルト戦の始球式に二郎さんと呼ばれて、初めて長嶋さんに会ったときは心から感動したものだよ。ボールを投げてヤクルトのベンチに戻ろうとしたら、巨人ベンチから長嶋さんが出てきて、

「欽ちゃん、こっちこっち」

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source : 週刊文春 2025年6月19日号