きっと、他の砂利輸送路線とともに震災からの復興、また戦後は戦禍からの復興と高度経済成長にも大いに貢献したに違いない。
そんな安比奈線も、長期にわたる休止を経て2017年に正式に廃線となった。安比奈線の活躍はもはや半世紀以上も前に遡る。それでも、まだ町の中に廃線跡はほとんどそのままに残っているという。いったい、どんな様子なのだろう。
出発地点の西武新宿線「南大塚」に向かうと…
そういうわけで、西武新宿線の南大塚駅にやってきた。南大塚駅そのものは小さな駅だ。
駅のすぐ近く、線路と並行するように国道16号が通り、また本川越寄りには関越自動車道の川越インターチェンジがある。線路に沿って南側は川越狭山工業団地。朝夕には工場への通勤客でも賑わいそうだ。
そんな小さな駅から、安比奈線は分かれていた。どのように分かれていたのかは、駅の北口に出ればすぐにわかる。
ホームの脇にコンクリート製の枕木などが並んでいる一角があって、その脇の道を辿っていくと新宿線から北に分かれるように弧を描きながら空き地が続く。誰がどう見たって、ここが安比奈線の廃線跡に違いない。
道路と交差するところでは、アスファルトにかつてのレールが埋め込まれたままだ。現役時代には踏切だったのだろうか。まあ、列車が走っていたのは60年以上も前のことだから、実際のところはわからない。
いずれにしても、道路と廃線跡はフェンスで区切られていてもちろん立ち入りはNGだ。聞けば、廃線跡の用地は西武不動産(3月31日までは西武リアルティソリューションズ)と西武鉄道の所有になっているという。
だからその脇を辿っていくしかないのだが、それにもまたいささか難儀する。廃線跡が遊歩道になっているわけでもなし、また道路に転用されているわけでもなし。それでいて、道路が並行しているわけでもない。
むしろ廃線跡の空き地にピッタリとくっつくように、南大塚駅前の住宅やマンションなどが並んでいるのだ。だから、廃線跡を見失わないように注意しながら、少し離れた道を歩かねばならない。